【「ベン・イズ・バック」を見て思うこと・・】.
東京公開とタイムラグこそあれ、ほどなく公開作を見ることができる有難い映画館。
それが、高松市内亀井町の老舗まちなか劇場、ホール・ソレイユ(ソレイユ2)だ。
かなりの頻度でお邪魔しているが、ここのところ立て続けに見た作品が、
いずれも薬物中毒の悲劇を描いたもの2作。
「ベン・イズ・バック」・・薬物依存の息子が施設から帰宅。受け入れる側の家族の
反応はさまざまだ。過去に幾度となく繰り返された悲劇におののく妹、
一定の理解を示しながらも懐疑的な母の再婚相手。無邪気に彼を慕ってくる義父の幼い連れ子たち。
聞けば、薬物を完全に断ち切れたかどうかは見極めるのが極めて難しく、
更生施設からの外出や出所時期は専門家でも判断が難しい世界だそうな。
それでも息子を信じたい、擁護せずにはいられない“痛い”母親像を、ジュリア・ロバーツが
力演している。若者に簡単に薬物が手に入ってしまうアメリカの現実。
「ビューティフル・ボーイ」・・同様の困難を、8年もの時間をかけて克服した親子と家族の再生の物語。
「ベン~」と大きく違うのは、こちらは母でなく父の存在、父と息子の関係性を大きくフィーチャーしているところ。
どんなに更生を望んでも試みても、誘惑と想像を絶する禁断症状に屈し、過ちを繰り返してしまう・・。
本人の苦しさ以上に、新たな家族や降りかかる苦難に押し潰されそうになりながらも踏ん張り抜く父の姿に胸が締め付けられそうになります。
堕ちていく息子役には「僕の名前で君を呼んで」で注目された美青年ティモシー・シャラメ。
彼目当ての観客もそれはそれ。私はただただ、苦悩の父親役を体現したスティーブ・カレルに感動した。
同様のテーマ、されど見終わった感覚は微妙に違い、どっちも見応えある作品でした。
決して好むジャンルという訳ではないが、例えそれが今の自分に身近に感じられるものではなくても
明らかに現実を切り取った、今だからこそ作られた映画。
片っ端から映画を見せてもらう私には、ひとつひとつが井の中の蛙から大海へと視点を広げてくれる有難い時間だ。