STORY 八十八

毎週日曜日9:00~9:15

それぞれの人や文化が持つ多様性。
未来のために今、それぞれの想いを受け入れるやさしさが、求められています。
古来よりうれしさや悲しみ、時にはその人の人生そのものを受け入れてきた四国お遍路には、
過去・現在、そして未来に続いているやさしさがあります。
これは、そのやさしさを探しに行く八十八という名の物語。

STORY 八十八

STORY 八十八

毎週日曜日 9:00~9:15
提供 株式会社アイム

2022年02月13日放送分

春を待つやさしい鈴の音に出会う弥谷寺の物語

四国霊場第71番 剣五山 千手院 弥谷寺

 

心地よい鈴の音が静かな弥谷寺に響きます。

訪れた参拝者が一つ買っていかれました。

その音の美しさに惹かれ…

チリンチリン…

 

《弥谷寺 大師堂で販売されている鈴に心惹かれ、

ご住職の奥さまにお話を聞きました》

 

これは何という鈴ですか?

《弥谷寺 建林 伊都子さん》

持鈴(じれい)です。山谷袋(さんやぶくろ)などにつけられるのですよ。

つけて、お遍路さんが「チリンチリン」と鳴らされるのです。

お守り代わりに付けられるのだと思います。

本当の鈴(りん)というのはあるのですが、

弥谷寺でお授けしているものはお守り的な

鈴(すず)に近いものです。

お遍路さんの音でしょう!

「チリンチリン」

みなさん鈴のついているのがお好きで、

お守りでも

「鈴がついているのをください」

とおっしゃいます。

金剛杖にも鈴(すず)を付けられる方もいらっしゃいます。

お遍路さんの杖から鈴の音がするイメージがあります。

《建林 伊都子さん》

そうです。

杖袋に鈴(すず)がついているのです。

ここでお遍路さんのお支度の品が置かれているのは、

お遍路さんが道中に揃えたり買い替えたりするためですか?

《建林 伊都子さん》

はい。輪袈裟がお遍路の最中に切れたからと

ここ弥谷寺に

古いものは納めて、新しいものを求める方がおられます。

最初から弥谷寺にきて、

「これからお遍路にお参りするので一式揃えてほしいのです」

とおっしゃる方もいらっしゃいます。

私もお守り代わりに一つ・・・・

 

 

四国霊場第71番 剣五山 千手院 弥谷寺  建林 良剛 住職

 

位置的には本堂の下すぐにお大師堂があるのです。

岩肌に面していて直接登ることはできないので

迂回して登るようにできているのです。

実際はお大師堂の真上が本堂なのです。

普通のお寺でしたら、山寺でも山の開けたところに

境内が建つものなのですが

ここは急斜面のところにお寺を建立してあります。

それ故に修行の地らしい場所という趣があるのです。

階段でつながる本堂まで歩いていくとかなり厳しいと

感じられる場所ではあります

 

修行の一端でも体験できる場所なのですね?

《建林 住職》

体験するということは大事なことです。

今は歩き遍路の方も増えていますが、

江戸時代から始まったお参りの仕方の

「七ケ所参り」も

多く訪れる方が増えています。

「七ケ所参り」は

ここ71番札所の弥谷寺からスタートし

77番札所道隆寺まで20キロ弱。

朝早く8時くらいに出ますと

大体お昼の3時くらいに回り終えることができるようです。

七ケ所参りで弥谷寺がスタートなのは、

ここが起点になる場所だからですか?

《建林 住職》

ここは瀬戸内沿岸の漁師の方・農業の方は、

年一回の農閑期になりますと船を仕立てて

春に毎年来られる方も多かったのです。

当時は船で到着されて、海岸寺の山を抜けて弥谷寺へ入られる。

一日を通して回られるコースであったのですね?

《建林 住職》

今でも瀬戸内近辺、岡山や広島、倉敷からの方が

年中行事としてお参りされることが多いのです。

自治会や村に「弥谷寺のお大師様」や

「善通寺のお大師様」としてお祀りされているところがあり、

一年間その地域で集めたお賽銭を「お接待」をなさいます。

昔は「接待講」を組んで来られていました。

 

お賽銭だけではなく、

ご寄付を募って代表の方が来られて

「お接待」をされお帰りになるのです。

それは、どんなお気持ちからなのでしょうか?

《建林 住職》

「報恩謝徳(ほうおんしゃとく)」ですね。

自分の縁のある周りの方々のご恩や徳によって

「生かされている」

という気持ちを持ち、お返しをすること。

これは仏教の教えの根本です。

「自分だけでは生きられない、生かされていることを知る」

のです。

いつもそのことに感謝することが大事であるということなのです。

特に漁師の方は命がけのお仕事ですので、

自分のお身内の方も漁でお亡くなりなり

悲しいことにも遭遇することもありますね。

もちろん普通の方でも最近では自然災害も多く

不慮の事故に遭う方もいらっしゃいます。

どのような方でも感謝の気持ちを持って

「生かされていることに気づく」

ことが大事なのだと思います。

忙しくしていると我がままになって

その大事なことを忘れていきます。

お四国に来るとそういうことも思い出されて、

心が洗われていくのだと思います。

 

 

お四国に来られて、いろいろな人に出会って

お話を聞かれて一生懸命にしていくと

感動し良いことがあるのだと思います。

 

年間たくさんのお遍路さんをお迎えになりますが、

時代の変化を感じられることはおありですか?

《建林 住職》

私の子どもの頃から比べて、現代人は忙しすぎますね。

今は情報社会になってしまっていますので、

聞かなくてもよい情報が入ってきます。

もう一度、自分の心を洗い流す意味でも

お四国は今からの時代にとって大切な道場となりますので

八十八ヶ所を回っていただきたいと思っています。

「七ケ所参り」を四国遍路のきっかけにされる方も多いのでしょうか?

七ケ所参りをされると体験になりますので、

初めての方は一度七ケ所参りで来られると

こんな体験ができるなら本四国(四国遍路)に行ってみたいと思われます。

本四国になりますと車でも10日前後、

特に歩き遍路となりますとお金もかかりますし、

日にちもかかります。

体験ツアー感覚で「お四国」の良さを感じていただくのには

七ケ所参りは最適な場所と思っております。

 

 

春の弥谷寺は、どんな様子ですか?

《建林 住職》

八十八ヶ所のお遍路さんは春のお彼岸を過ぎてから増えます。

ここ弥谷寺も3月20日と21日はお大師さんの「永代経法要(えいたいきょうほうよう)」

という大きな法要がありたくさんお参りもございます。

善通寺をはじめ各お寺でも春の行事が控えております.

その頃から、お遍路さんも増えて賑やかになってまいります。

本当にはやくこのコロナ禍が収束して、普段の生活が戻ればと思っています。

春の鈴の音が聞きたいですね。

今まで通りのお参りができるようになることを願っています。

 

《建林 住職》

弥谷寺にはお大師様が納められたとされる「金銅五鈷鈴(こんどうごこれい)」。

唐からご招来8世紀のもので国の重要文化財になっていまして、

毎年出展勧告がありここにはないのですが寄託しています。

香川県の歴史博物館の「空海コーナー」に

そのレプリカがございますのでご覧いただけます。

非常に貴重な工芸品です。

世界中を探しても、弘法大師ゆかりの法具はそれほど残っていないそうです。

それを守り伝えていく責任がございますね?

《建林 住職》

そうです。その責任感は重大です。ここは山寺で

何百年もの木が岩の上に立っているところもありますので、

台風などの被害で倒れたりして管理が大変なのです。

できるだけこの景観を守ってずっと残していきたいと思っております。

 

《建林 住職》

本堂からは三野平野が見渡せます。

お正月ころですと午前8時前くらいにこちらの向かいの山からお日様が登ってきます。

それは感動します。ちょっと変わったご来光なのです。

こちらは弥谷山の向かいの山、火上山(ひあげやま)がありますので、

冬の日のではだいぶ遅くなるのです。

午前8時前くらいに本堂の上で見ますと

ちょうど東の空から登ってくる太陽が見えます。

そんな様子を見たい方は、おいでいただいてご覧いただきたいです。

地元の方々も遍路道の周りに木を植えていただき、

「お接待」を含めてこの景観とお四国文化を大事にしていただきたいです。

四国に生まれたものとして、これは大事な事と思います。

今からも頑張りたいです。

今は「世界遺産登録」へ向けての活動もされていますので、

文化遺産を守るということに

私たちも努めていかなければと思っています。

この番組は、radikoでも お聴きいただけます

 

 

 

 

 

 

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