STORY 八十八

毎週日曜日9:00~9:15

それぞれの人や文化が持つ多様性。
未来のために今、それぞれの想いを受け入れるやさしさが、求められています。
古来よりうれしさや悲しみ、時にはその人の人生そのものを受け入れてきた四国お遍路には、
過去・現在、そして未来に続いているやさしさがあります。
これは、そのやさしさを探しに行く八十八という名の物語。

STORY 八十八

STORY 八十八

毎週日曜日 9:00~9:15
提供 株式会社アイム

2022年04月03日放送分

大学生が絵本で繋ぐ四国遍路文化①

 

大学生が作ったお遍路を題材にした絵本が

小学校や幼稚園、公共の図書館などに配られました。

香川で大学生活を送った彼女たちがお遍路と出会い、

次の世代へと繋ぐ担い手となりました。

 

今回は大学生が綴ったお遍路の絵本

「さるとおへんろ」の物語

この春、香川大学を卒業されたばかりの大学生。

放送の頃には、新社会人という2人をお迎えし

お話を伺いました。

香川大学 教育学部 4年生 上田佳奈さん(取材当時)

香川大学 教育学部 4年生 西崎莉央さん(取材当時)

 

上田さん、どういう経緯があってこの絵本を作ることに

なったか教えていただけますか?

《上田さん》

「大学3年生後期の時に受講した

『総合的学習論』という授業の中で最終発表として

この「さるとおへんろ」の絵本を製作しました。

《 西崎さん》

先生の方から『四国遍路』をテーマとして

授業が進められていて

最終的に授業を通して学んだことを

発表する場があったのです。

そこで私たちは四国遍路の課題点として『高齢化』

があると感じたのです。

四国遍路をする人も、それを支える

お接待や遍路宿の経営者も

『高齢化』が進んでいて、跡を継ぐ人がいなかったり

伝えていく人がいないことで文化が途絶えてしまうことが

問題点だと思いました。

次世代に繋げていくために

どんなことができるかなということで

子どもたちがよく目にするもの、

絵本を作ろうということになりました。」

 

内容を紹介してください。

《上田さん》

「主人公はサル。

このサルは、初めいたずら好きでやんちゃなサルです。

そのいたずらの一つとして

お遍路さんであるお爺さんの服を奪ってしまいます。

それがきっかけで、サル自身がお遍路さんと間違われて

温かいお接待をいろいろな人から受ける

その中でサルが人の温かさに触れて

自分を見つめなおすような内容になっています。」

 

それまでのお二人の「お遍路」についての

知識はどんなものでしたか?

《上田さん》

「私は全くと言ってよいほど

「お遍路」についての知識はありませんでした。」

県外から大学のために香川にいらして

身近に「お遍路文化」はなかったのですね?

《西崎さん》

「私も香川に来るまでは全く四国遍路というものを

知らなくて、大学に来てからときどき

『四国遍路』について学ぶ機会があったという感じです。

最終成果物を作るまでに

「お遍路」に対する自分たちの意見

お遍路に対してどんなことを

思っているのかを発表する場があったのです。

一人の女子学生が

その学生は香川出身者で

「今度授業でお遍路に行くのだよね」と

地元の友達に話したところ

「えー、いいな!」と言ってくれたのだと聞きました。

その話を聞いたときに

地元で元々お遍路に親しみを持っている人は

「お遍路」に行きたくなるのだと気付きました。

そこで昔から親しむものって

なんだろうと・・・・「絵本」

という思考になりました。

言ってしまえば、成績が付くものとして

発表すればいいのですけれども

授業の中で触れたお遍路の課題点に

どうせ取り組むなら、真剣に

役に立つもの為になるものをと考えました。

そこで、私たちにできることって何だろう

絵本だったら私たちでもできるし、

効果もあるのではないかと思って「絵本」にしました。」

《上田さん》

「絵本は『ぐりとぐら』や『はらぺこあおむし』は

大人になった今でも思い出して

例えば、青虫を見たら『はらぺこあおむし』だと

私だったら頭によぎるのです。

そういった感じで青虫にも

親しみを持つことがあると思うのです。

この「さるとお遍路」を読んでもらえたら

「お遍路」という言葉に

「さるとおへんろ」という絵本があったと

思い出して親しみを持ってもらえるかという

想いがありました。」

《西崎さん》

「最初に、上田さんがざっくりと

ストーリーを考えてくれて、

そこから私が絵を担当しました。

絵でとらえやすいように、文章にちょっと改善しつつ

描いていったという感じです。」

 

文章があってそれに絵を合わせる

やり方もあるかもしれませんが

お二人の作り方としては、文章もあって絵もあって

お互いがやり取りしながらひとつずつ進めていったのですか?

《西崎さん》

「そうですね。」

 

色々なお遍路の話の中から今回の筋立てにしたのには

何を主題に何を伝えたかったのでしょう。

 

《上田さん》

「授業を通して学んだ私が思う「お遍路」

というのは

何か心に悩みがあったり、ちょっと疲れたなという時に

お遍路をして

気持ちが晴れたり、人のやさしさに触れて

温かい気持ちになってお遍路を終えるというような

イメージを持ちました。

それを表現できるような内容にしようと思いました。」

 

「おさるとおへんろ」

ぶん:うえたかな

え:にしざきりお

 

《読み:上田佳奈さん 西崎莉央さん》

 

あるところに、わるいことばかりするおさるさんがいました。

「きょうはなにをしてやろう」

きのうえでにやにや

むこうからおじいさんがやってきました。

「おや、まっしろなふくのおじいさんがきたよ」

おさるさんはきからおりて、

おじいさんのところにやってきました。

「やあ、おじいさん。いいてんきだね」

「こんにちは、そうだね。きもちがいいね」

おじいさんとあいさつをしたそのとき

「やーい。ぜんぶよこしやがれ」

なんとおさるさんはおじいさんのふくやもちもの

ぜんぶ、もってはしりだしました。

「ま、まってくれ」

おさるさんは、

おじいさんからうばったものをみにつけ

つぎはどんないたずらをしようかかんがえました。

すると

「あら、おへんろさん」

とこえがしました。

「おへんろさん、おつかれさま、おなかがすいているんじゃないかしら」

「いっぱいたべて、おいしいよ」

おにぎり、うどん、えびふらい。

「なんだ?なんだ?」

おさるさんはなにがなんだかさっぱりわけが

わけかりません。

おへんろさんって…

おへんろさんについてかんえながらあるいていると

こんどはおばあさんにこえをけられました。

「おへんろさん、ここですこしきゅうけいしていきなさいな」

 

おばあさんはおいしそうなおちゃをだしてくれたので

やすんでいくことにしました。

「これからもがんばってね。」とはげましのことばに

おさるさんはげんきをもらいました。

するとまたまた

「おへんろさん」

とこえをかけられました。

「たくさんあるいてつかれただろう。まっさーじしてあげよう」

「いたたた・・・でもきもちちいい」

おさるさんはたくさんのひとにやさしくしてもらって

なんだかむねがあったかくなりました。

「でもぼく、おへんろさんじゃないよ。

これはおじいさんのふくなんだ」

おさるさんはみんなのやさしさに

うれしくてなみだがでました。

「どうしてみんなやさしくしてくれるんだろう」

 

そのときおぼうさんがあらわれ

「おへんろさんはね、おせったいをうけるんだよ。

おへんろさんはとてもたいへんだから

みんながおうえんしてくれるんだ。

そのときにありがとうのきもちちをわすれてはいけないよ」

といわれました。

あったかいおせったいをうけたおさるさんは

いままでわるいことをしていたことがはずかしくなりました。

そして、おじいさんにきちんとふくをかえしました。

「おぼうさんがおしえてくれたんだ。ふくをとっちゃって

ごめんなさい」

するとおじいさんはにっこりわらって

「おだいしさまにあえたんだね」といいました。

~おしまい~

今回は  大学生が作った絵本

「さるとおへんろ」の物語でした。

 

 

番組は、radikoでも お聴きいただけます

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