子授け・安産、子どもや女性の守り神・訶利帝母さまの例祭を迎えた金倉寺の物語
善通寺市金蔵寺町にある
四国霊場第76番札所
天台寺門宗別格本山
鶏足山 宝幢院 金倉寺
副住職 村上哲済さんにお話を伺います。
《村上副住職》
「金倉寺で一番特徴的な事は、智証大師さまのお生まれになったお寺。
それが、ここ金倉寺です。
弘法大師さまが非常に有名ですが
お大師さまというのは、
これまでの歴史の中で実は全国に25名いらっしゃるのです。
そのうちのお一人である智証大師さま。
智証大師さまはお坊さまとしてのお名前を「円珍さま」と言い
円珍さまがお生まれになったお寺がここ金倉寺である。
このことがお寺にとって、非常に重要な事であると言えます。」
円珍さまと弘法大師さまのお繋がりとは?
《村上副住職》
「一般的な言い方では、弘法大師さまの甥っ子で
年齢的にもちょうど40歳離れられています。
色々なご縁があるもので、弘法大師さまがお生まれになった年に
ここ金倉寺は創健し、
その40年後に智証大師さまがお生まれになったお寺と言われています。」
《村上副住職》
「このお寺は空海さまのお生まれになった年に
できたお寺ですので、
来年が弘法大師さま1250年のご誕生で
こちらのお寺も創健1250年を迎えます。
弘法大師さまが40歳上ということで、
智証大師さまもお小さい時に
お会いになられたことがあると聞いております。
賢い子どもであるという噂があったことから、
弘法大師さまも「ぜひ高野山へ」と望まれたという
お話が残っているのですが
ただ智証大師さまのお父さまの弟の方が
比叡山延暦寺の天台宗のお坊さまだったことから
智証大師さまは、そちらのお坊さまになられたので、
この金倉寺は天台宗なのです。」
《村上副住職》
「弘法大師さまと智証大師さまは
高野山と比叡山という
当時の平安時代の仏教の中でも2大仏教、
言えば今の日本の仏教の一番根幹を担う
2つの両方を支えられたお二人が
同じ時代にこの場所でお生まれになったことが
素晴らしいご縁だと思います。」
《村上副住職》
「お寺の仁王門からまっすぐ正面を進みますと
本堂がございます。
こちらは薬師如来さまがご本尊です。
両脇にはお不動様がいらっしゃって
こちらで毎月一度、護摩を焚けるようになっています。
また反対側の左手側の方に、阿弥陀さまがいらっしゃって
こちらでは皆様がお寺でイメージしやすい
法事などを行っております。」
「その本堂の横、西側に訶利帝堂(かりていどう)
というお堂がありまして
訶利帝母(かりていも)さまという
仏様をお祀りしております。」
「こちらの訶利帝母さまが子宝だったり
安産の仏様ということで
普段はそういった方々の祈願を中心に行っております。」
地元では「おかるてんさん」として親しまれている
訶利帝母さま。
例大祭が昨日7日と今日8日に行われています。
「訶利帝母さまというのが、我々のお寺では呼びますが
一般的には『鬼子母神』という風に
呼ばれている仏様・神様であります。
鬼の子どもの母と書くのです。
そのお名前の通り、元々は鬼だった
人の子どもを取って食べる悪い鬼の話をお聞きになった
お釈迦さまが「それはいかん」と
訶利帝母さま(鬼子母神さま)は子どもが500人と
言われているのですけれど
そのうちの一人、末っ子をお釈迦さまが隠されるのです。
そのことを知った鬼子母神が
7日7晩泣き叫んで、子どもを探し回るけれども
見つからない。
その時にお釈迦さまに出会って、
「子どもを失い、食べることも寝ることもできない」と訴えると
お釈迦さまは
「お前は500人も子どもがいるのに、
たった一人の子どもがいないだけでなぜ、そんなに悲しむのだ。
人間の子どもはもっと少ないのだぞ。
たった一人でもそんなに悲しいならば
人の子どもが取られるとどれだけ辛いかわかるであろう。」
と諭されまして
それを受けて、お釈迦さまに鬼子母神が
「私はこれから子供が欲しい方に
子どもを授けます。
そしてその子どもを守っていきましょう」と誓われるのです。
そう改心されて、今度は神さまになられた。
「鬼子母神」は最後に「神」と付きますけれども
訶利帝母さま(鬼子母神さま)は
神様になられたと言われています。」
ここには訶利帝母さまと智証大師さまの
縁に纏わるお話がありました。
《村上副住職》
「智証大師さまが5歳の時に
『あなたがこれから仏道の道に
入られて修行すると誓うならば
私はあなたをずっとお守りする』と
訶利帝母さまが出現されて宣言されたと
言われています。
これが日本で最古の訶利帝母さま(鬼子母神さま)が
出現したお寺と言われています。
ずっと智証大師さまの守り神として
訶利帝母さま(鬼子母神さま)がお傍にいらっしゃったとして
我々の宗派では訶利帝母さま(鬼子母神さま)のことを
護法善神(ごほうぜんじん)さまという言い方をいたします。」
《村上副住職》
「訶利帝母さま(鬼子母神さま)のお話にも出てきたように
お釈迦さまに子どもが欲しい人に子どもを授け、
さらにその子どもを守っていきますと誓われたということで
子どもが欲しい方の「子宝の御祈願」であったり
子どもが無事に生まれますように「安産祈願」
また生まれた子どもの「お礼参り」ということで
みなさん、小さな赤ちゃんを抱いて
神社ですと「お宮参り」といいますが
こちらはお寺なので「初参り」という言い方ですが
そういったお参りに来られるようになっています。
訶利帝母まつりに合わせて「こどもまつり」も開催され
境内には賑やかな親子ずれの声が響きます。
今日5月8日は特別な日になるわけですね。
「5月16日というのが訶利帝母さまのご縁日ですね。
その一番近いところで第2日曜日にご縁日にちなみまして
普段はお厨子の中にいらっしゃって
お姿は見えないのですけれど
この7日(土)8日(日)の2日間だけは
お外に出ていただいて
みなさまに見ていただける場所、本堂の方に移られます。
そちらの方で、お姿が見られるように
なっております。」
《村上副住職》
「5月8日は、お昼12時から、大般若転読会という法要で
みなさまのお願い事を伺ったものを
お札にして御祈願してみなさまに
お授けすることになっています。
また「こどもまつり」というお祭りがございまして
実行委員会が立ち上がってやって頂いているのですが
催物・音楽の演奏や子どもさんが遊べるコーナーがあり
境内は家族で楽しめるようなお祭りとなっております。」
《村上副住職》
「子どものお参りに来られる方は、
子どもがお生まれになる前までは自分とパートナーという
世界だったのが、自分たちが守らなければいけない
かよわい存在が誕生するということで
やはり心の中で変化があります。
自分たちだけなら何とかなると思っていたことが
縋るものがないと・他に託すものがないといけないという
心境が変わってくるのかなと思います。
そういった方々がお参りに来られて、
慈しむ心で子どものことをお願いに来られる。
その時に中心となるのが、「訶利帝母さま」であると
感じております。」
この土日は、特に親子連れのみなさんが
賑やかにお出でになる縁日なのですね。
《村上副住職》
「そうですね。
お遍路さんもいらっしゃいますし、
家族連れの方もいらっしゃいます。
それぞれの方が『にこやかになる』
お寺でそういった景色が見られることは非常に楽しいですね。」
今回は「子授け・安産、子どもや女性の守り神」
訶利帝母例祭を迎えた金倉寺の物語でした。
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