STORY 八十八

毎週日曜日9:00~9:15

それぞれの人や文化が持つ多様性。
未来のために今、それぞれの想いを受け入れるやさしさが、求められています。
古来よりうれしさや悲しみ、時にはその人の人生そのものを受け入れてきた四国お遍路には、
過去・現在、そして未来に続いているやさしさがあります。
これは、そのやさしさを探しに行く八十八という名の物語。

STORY 八十八

STORY 八十八

毎週日曜日 9:00~9:15
提供 株式会社アイム

2022年09月04日放送分

八栗寺の境内を巡る物語

西側に屋島を望む高松市牟礼町

五剣山の中腹にある四国霊場第85番札所八栗寺

商売繁盛の神様「お聖天さま」のお参りに来る人も

多いことで知られています。

今回は八栗寺の境内を巡る物語です。

五剣山観自在院 八栗寺

ご住職の新見玄竜さんにお話を伺います。

「目の前にあるのが五剣山。

お大師様がここで修行されました。

修行が充満した時に5本の剣が空から

降ってきて、その5本の剣を山の

峰々に埋めたということからこのお山は、

五剣山という名前になっています。

 

実は本尊様が観音様でございます。

そのことから観自在院。

それから八栗寺というのは

八つの栗の寺。

お大師様が中国に行かれる前に

8つの焼き栗の実を植えたところ

お大師様が中国から帰ってきてみると

全て成長繁茂していたことから

八栗寺となりました。

五剣山観自在院八栗寺ということです。」

焼き栗だったのですか。

《新見住職》

「焼き栗を植えたら、とても芽など

出るはずもないのですけれども

お大師様が中国に行かれて

真言密教を学ばれて帰って来られること、

それがとても難しいことであったのです。

当時中国に渡るということも命がけで、

それから向こうで恵果(けいか)和尚という方に会われるのです。

この恵果和尚にはたくさんのお弟子さんがおられました。

恵果和尚はその人その人にあった教えを伝え

全部は教えないのです。

ある弟子にはこの教えをある人にはこの一部を教えていたが、

お大師さまには全部を教えてくださったというのです。

そんなこと全てを含めて奇跡的な事であるということから、

焼き栗から芽が出るわけはないのに出たというくらい

お大師さんが中国に行って勉強されたことは

奇跡的な事であったというお話として

残っているのであろうと私は考えております。」

 

ご本尊様は?

《新見住職》

「観音様です。観音様というのは

色々とお姿を変えられるのですけれども

お姿を変えられる前の

スタンダードな観音様ですね。」

 

お姿を変えられるというのは、

千手観音や十一面観音など・・・

《新見住職》

「その元々のお姿、最初のお姿ということです。」

八栗寺の境内で木陰を作るのは菩提樹の木。

《新見住職》

「菩提というのはお釈迦様の「悟り」ということを

表していまして、

インドのこの菩提樹の木の下でお釈迦様が悟りを開かれたのです。

花は梅雨時の6月15日ごろに満開になります。」

 

どんな花が咲くのでしょうか?

《新見住職》

「可愛らしい小さな花なのです。

小さな花がたくさん集まって、全体に大きな花になるような

紫陽花などと似て、色は最初は白なのですが

だんだん日が経つにつれて黄色くなってきます。

匂いがとてもいいものですから、この花の時期に来ていただくと

香りで境内がありがたく包まれます。

 

 

この菩提樹の下には仏足石(ぶっそくせき)があります。

《新見住職》

「お釈迦様の足跡です。」

足形になっていますね。

「そうです。

お釈迦様の足跡で、お釈迦様の足の裏には実は色々な模様が入っていると

言われているのです。

うちでは特にお釈迦様によって仏法が

広まっていったということを強調したいので、

羯磨(かつま)の紋、真ん中は蓮華で

蓮華の教えが広まっていったということを表すべく

このような形にしています。」

また、石が綺麗ですね。

《新見住職》

「これはインドの石だそうです。

下は庵治石で、庵治石の上に蓮華のかたちをした石を作り

その上にお釈迦様の足が乗っているというものです。」

 

庵治石の里ならではで、土台部分は庵治石。

《新見住職》

「そういうことです。

平成30年にこれを作ろうと思ったときに

何か良いものはないかと

考えておりました。

以前、大師堂にインドの土を納めたいという方がおられまして

納めていたことを思い出しました。

「インドの土がこの仏足石の中に入ったら

本当にありがたいものになるであろう」と

考えまして、インドの土をこの仏足石の中に

お納めしました。」

すごいご縁ですね。

《新見住職》

「そうですね。このお寺のお聖天様を拝んでおりますと

不思議なことがこのように出てくるということです。

自分が望まなかったことでも、いい出会いがあったり

良いご縁があったりと話がどんどん進んでいくと

いうことがあります。」

拝まずにおれませんね。

《新見住職》

「しっかりと拝んでください。

遠慮しなくて良いのです。

お聖天様というのはフルネームで言いますと

「大聖歓喜双身天王」(だいしょうかんぎそうしんてんのう)といます。

 

歓喜=歓ぶ喜ぶとは、歓ぶことを喜ぶことです。

皆さまが喜ぶことが実はお聖天様も嬉しいのだと

歓び喜んでくださる神様です。

色々な願いをもってお聖天様をお参りにきてくださって

手を合わせて願いを叶えていただく。

ただ願いを叶えて頂いたら、その喜びを自分のものだけに

するのではなくてそれを周りに広めていく

独り占めではなく「シェア」です。」

令和9年がお初伝様がこちらに来られてから350年です。

こちらのお聖天様というのは

後水尾天皇皇后さま=東福門院(とうふくもんいん)さまというのですが

その念持仏であったと言われています。

その念持仏を以空(いくう)上人が頂いてどこに祀ろうかと

四国を巡錫されておられました。

それでここが良かろうということで八栗寺に祀られたということです。

現在の聖天堂はもともとは護摩堂であったようです。

護摩堂のあったところにお聖天様をお祀りしました。

ちょうど洞穴になっておりまして、

穴に引っ付くようにして聖天堂が建てられています。

皆さんご存じだとは思うのですが、

お聖天様は商売繁盛の神様です。

正式な意味では仏さまになるのですが、仏さまの中で

天賦の仏さま。

インドでは後から仏教に入ってきた神さまで

日本では神様として祀っておりますので、八栗寺には鳥居もあります。

縁日は16日、さらに1日も朔日参りということで

たくさんお参りがあります。

1日に参るというのは、前月の色々なことに対する

感謝の気持ちを表す、それから新しいひと月に対し

「幸多かれ」とお祈りするということで

昔からお参りする方が多いと考えています。

ですから1日に参られると良いのではないかと思います。

お聖天様を拝むのは、正直大変なことなのです。

私のお寺では檀家さんもありませんので、

お聖天様を拝む時間はたっぷりあります。

常に朝の6時ごろから1時間くらいお聖天様を拝みます。

それから月末の1週間ぐらいは深夜の3時ごろに起きて

3時半くらいから7時まで拝むのです。

それが私の修行であって仕事、自分の喜びでもあります。

 

来年お大師様の生誕1250年ということで、霊場会のほうで

スタンプを納経帳の方に押しています。

そのスタンプというのは、各寺院の住職の座右の銘であったり

好きな言葉を押しています。

私としましては「禅黙為心(ぜんもくいしん)」という言葉を選びました。

禅宗の禅と黙する・黙る、行為の為そして心。

禅黙を心とするというのは

お大師さまの言葉で、「拝む」ということです。

しっかりと拝むということが自分の使命なのだと

お大師様がある書の中で言われています。

ただひたすらに拝む。

「衆生済度のために拝む」ということを自分の使命とする

というお言葉と考えております。

私もこの「禅黙為心」という言葉を自分の杖としており、

この言葉を選ばせていただきました。」

今回は八栗寺の境内を巡る物語でした。

番組は、radikoでも お聴きいただけます

YouTube配信もスタートしています。

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