遍路道を子どもたちと歩く 次世代へ繋ぐ物語~こぼれ話~
STORY八十八最終回は
遍路道を子どもたちと歩く
次世代へ繋ぐ物語。
放送では語り切れなかった貴重なお話を
「こぼれ話」としてご紹介します。
『親子お遍路ウォーキング』を主催する
NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク。
事務局長の宍戸栄徳(はるのり)さんに伺いました。
「四国遍路の活性化とそれに伴う
お接待文化の活性化に取り組んでおります。
一つの大きな目標としては、
四国遍路を世界遺産登録しようと
世界遺産に結びつくような活動になると
良いなと願いさまざまな活動をしています。」
ネットワークという活動で言うと
最近は毎年2月23日に
「一日一斉おもてなしウォーク」という
これは遍路道をみんなで手分けをして
他のお遍路をする人たちのために
遍路道を地元の人間が
きちんと点検する趣旨でやっているものです。
これが四国中の人に声をかけてやっているので
四国遍路のネットワークをしているという
イメージに一番近い活動かと思っています。
それに対して
『親子お遍路ウォーキング』というのは
若い世代の方に
お遍路を歩いて回るという文化を伝えていこうという
主旨でお子さんと保護者の方に参加いただいて
一年に4回開催しています。
2年間8回で日帰りの遍路体験をするわけですけれども、
そうすると雲辺寺から結願のお寺大窪寺までを全部回って
参加するご自身がお遍路さんになって体験をするものです。
そのときに可能な限り「お接待」の体験もして頂けるように
仕組みを作ってやっております。
1回目が9月24日、2回目が10月15日
お寺で言うと弥谷寺から善通寺までお参りするのです。
3回目が11月5日で金倉寺から郷照寺まで行く、
それから4回目が11月26日で
天皇寺から直接、白峯寺まで行きます。
通常、天皇寺が79番のお寺になって
80番は国分寺なのですが、実は81番の白峯寺に回る方が
距離的には若干近いという事情があって
本物のお遍路さんでも、そうして回られるルートを
取られる方もおられるので
今年は変則ですが79番天皇寺から81番白峯寺まで行って
今年度の親子お遍路ウォーキングはいったん終了しようと思って
います。来年度は国分寺からまた、始めます。」
《宍戸さん》
「今年は新しい試みとしまして
実は今年の3月に福井県の
『越前笠を守る会』という有志の団体の方から
本物の菅笠を頂きました。
親子お遍路ウォーキングというのをされているから
ぜひお子さんに被ってほしいと
我々のところにご寄付頂けることになったのです。
小さいものを一定の数作って寄付の申し出があり
有難く受けさせていただきました。」
菅笠を寄贈した「越前菅笠を守る会」の
宮永さん、鈴木(すすき)さんにお話を伺います。
「私どもがずっと毎年作っておりますこの越前菅笠を
お遍路さんの四国の子どもたちに
被って頂きたくてお持ちしました。
私どもの越前菅笠は農業用の菅笠でして
一日中農作業する男性・女性が被る
菅笠だったのですけれども
農業の機械化によってだんだん被ってくださる
農業従事者の方も減ってきて
菅笠を製造する数もここ数年減って来ていたのです。
そこで何かしなくてはいけないと
思っていたところ四国のNPO(遍路とおもてなしネットワークの)
存在を知りまして、その活動をずっと追っていましたら
子どもさんが大人の大きい笠を被っている写真を見たのです。
『あ、私が小さめに試作で作った(菅笠を)
(四国の)子どもさんに被ってもらったらとっても良いのではないか!
昔の人たちが作り続けてきたものを現代の子どもたちに被ってもらったら
これは良いな!』って
そう思って(子供用を)作りだしたのがきっかけで
これから(遍路とおもてなしネットワークさんと)
交流させていただきたいと思っています。」
菅笠作りはどのように
伝承されてきたものなのですか?
「『場』というのがあって、
4~5人が集まって女の人が菅笠を縫う場所があったのです。
村の中でそういう場所があって
そこで世間話をしながら
一冬中縫っていた。
雪が降り農作業ができないときに
女の人たちの社交の「場」、内職の「場」ということです。」
菅笠の良いところはどんなところですか?
「乾燥した菅ですので、雨に濡れると膨れる
膨張するのです。
それで雨が染みない、軽い、耐久性もある
そういう菅笠は先人の良い品物を
私たちの手で(守り)知っていただきたいという
想いがあります。」
手に取らせていただきますと、
「軽い。すごく軽いこの菅笠!」
さらに菅笠につける「五徳(ごとく)」
直接菅笠に触れないように作られているカバーの部分。
「五徳」によって構造的に笠の上部と
頭にすきまができるので、歩くと風が入り蒸れを防いでくれます。
夏の暑さも雨も雪も防いでくれる
驚くほどの昔の人の知恵が詰まっていますね。
「でも触ってみないと本当の良さはわからないでしょう?
子どもさんに先人の知恵を被っていただけたらという
想いで寄贈しています。」
お遍路さんの本来の姿がこの菅でつくられた菅笠姿
ということですね。
菅笠文化を残していらっしゃる方々に
これを提供していただけるのはまさに「ご縁」ですね。
「はい。」
私たち香川に住んでいるものにとって
なかなか本物の菅笠のできる工程も作られている方々、
その歴史も身近に知ることができないことです。
こうして30個の菅笠が福井から届いて
先人の築き上げられた技術と文化を
目の当たりにできますね。
「今年、お遍路を始める子どもたちの
良い門出になるよう私たちも信じています。」
遍路道を子どもたちと歩く次世代へ繋ぐ物語~こぼれ話~でした。