Vol.88 12月1日/土庄町・小豆島 旭屋旅館.
香川県小豆島、島の玄関口 土庄港周辺には旅人を迎える宿泊施設が立ち並んでいます。中でも戦後からおへんろさんを迎え入れてきた「旭屋旅館」の2代目 岡田健三さん、鈴子さんに「小豆島の島へんろ」についてお話をお聞きしました。
「旭屋旅館」の始まりは札所に向かうお遍路さんをおもてなしする山の中腹の茶屋。宿がなく困っていたお遍路さんのために現在の場所に移転し、昭和28年から旅館をはじめました。
港が近いのでお部屋からは海が見えます。ゆったりと過ごせる和室で、思わず我が家に帰ってきたような安堵感。最近はおへんろさんより観光客の方を多くお迎えしています。
小豆島88ヶ所霊場は全て巡れば約150kmの距離になりますが、歩きでも1週間で巡れるそう。「山あり、谷あり、海あり、洞窟あり。変化に富んだ島の風景の中を巡り、一歩一歩進むことでお大師さんのところに辿り着くんや」と健三さん。
帰ってきたおへんろさんにはまず玄関で錫杖を洗っていただきます。杖はお大師様ご自身。きれいに洗えるようにと特別に木桶を用意しています。
歩き疲れたおへんろさんがホッとするロビーのマッサージチェアとコタツ。そして鈴子さんの「おかえりなさい」という一言に心も体もほぐれます。
ロビーには修行中のお大師様、朝食をとる大広間には修行を終えられたお大師さまのお姿が。おへんろさんは出発前、到着時にそれぞれのお大師さまの前でおつとめをされています。
旅館ができたのは戦後。健三さんが小さいころは、港から鈴を鳴らしながら歩いてきたおへんろさんに駆け寄り「豆ちょうだい!」とおやつをおねだりしていたそう。「お父さんが倒れたことをきっかけに25歳で旅館を継いだ時は本当に大変だった。」と健三さん。結婚したばかりの鈴子さんと毎日大量のごはんをおへんろさんのために用意し、たまに焦がしていたというエピソードも今では笑顔でお話できるように。
1日3000人ほどのおへんろさんを迎えていた小豆島ですが、コロナ禍や高齢化をきっかけに島へんろに訪れる方が激減しているそう。自然の中で自分を見つけるきっかけになり、精神的な安らぎを持って帰れる島へんろをもっと多くの方に体験してもらいたいと岡田さんご夫妻。おへんろさんのために力を貸してあげたいという気持ちは「旭屋旅館」の名前とともにずっと残したいという一言が印象的でした。
▪️旭屋旅館
香川県小豆郡土庄町甲6190-6(土庄港高速艇乗り場から徒歩1分)
お問合せ先/0879-62-0162
公式サイト/http://www.asahiya.org