FM香川 CMコピー大賞2022

I LOVE RADIO 786

特別審査委員

中村由美 株式会社エフエム東京 コンテンツビジネス本部 営業局 営業推進部CMルーム
TOKYO FM社員として、2002年~2010年までCM制作ルームに配属、また2018年より再び配属。
CMの企画プランニングからディレクションまでCM制作全般を担当。
CMプロデューサー/プランナー/ディレクター。

総評

今回もたくさんのご応募ありがとうございました。

満場一致、文句なしのグランプリに輝いたのは、香川県危機管理総局くらし安全安心課「ぼくはゆうれい」篇。交通安全を呼びかけるメッセージは、いかに「自分ごと化」させるかがポイント。この作品は「ぼくはゆうれいかもしれない」という意表をつくセリフで、一気に作品の世界に引き込みます。この子は死んでしまったのか?無事だったのか?聴く人の想像を刺激し、深い余韻を残す構成で、見事に「自分ごと化」に成功しています。

準グランプリの喜多猿八「社名変更?」 篇は、喜多猿八の「人柄」ならぬ「企業柄」を、おちゃめに表現しています。社長さんが、本当にこんな発言をしていそうな気すらしてきます(笑)。喜多猿八ファンを一気に増やしそうなCMです。

今回、選に漏れた作品の中にも、「言葉」や「音」を工夫した、ラジオらしいアイディアがあって嬉しい限りでしたが、そのアイディアが商品と結びついていないこともありました。ぜひ「HOW TO SAY」だけでなく、「WHAT TO SAY」も大切にしてみて下さい。CMの使命は、商品の魅力を伝えること。まずは、商品を穴があくほど、見つめる。調べる。実際に食べてみる。行ってみる。自分なりに深堀りしていく中で、「何を言うか=WHAT TO SAY」が必ず見つかります。その上で、「どう言うか=HOW TO SAY」を探してみて下さい。

もう1つオススメしたいのは、コピーを「音読」すること。自分の声で録音して聴いてみると、「この言い方だと伝わらない」「このセリフ、不要だな」など、気づきがあります。検証を重ねると、コピーがどんどん磨かれていきます。来年も、皆様のチャレンジを、審査員一同、心よりお待ちしています!

グランプリ

香川県危機管理総局くらし安全安心課

「ぼくはゆうれい」篇谷村 翼(京都府)作品を聞く
少年: ぼくはゆうれいなのかもしれない
SE: 車が行き交う
少年: 横断歩道で手を挙げているのに、車が止まってくれないきっとぼくのことは、誰にも見えてないんだ!
NA: 信号のない横断歩道、歩行者が見えていますか?
横断歩道は歩行者が絶対優先です。 香川県
少年: ねえ!見えてる?
【 寸評 】
交通安全の呼びかけは、真面目に言うだけではダメ。いかに「自分ごと化」させるかがポイント。この作品は、冒頭の1行だけで、ぼんやりラジオを聴いている人をハッとさせる強さがあります。この子はいったいどうなったのか?・・・・映像が無いからこそ、聴く人が自由にイメージできる。ラジオの特性をみごとに生かした作品です。

準グランプリ賞

株式会社喜多猿八(キタエンパチ)

「社名変更?」篇宮崎 英明(大阪府)作品を聞く
社長: 喜多猿八だと何の会社か分かりにくいので、社名を、
「農薬販売をはじめ、ドローンによる農薬散布、害虫駆除で
日本の農業を元気にする 喜多猿八」にしようと思うんだが・・・
女性社員: 社長、電話を受ける者の身にもなってください。
NA: 社名は変えずに! 喜多猿八
【 寸評 】
おそらく、CMの作者は、「喜多猿八」の応募者へのコメントを読んで、「人柄」ならぬ「企業柄」を感じ取り、ユニークな社風を想像しながら、楽しみながら、コピーを書いたのではないでしょうか。企業の熱い想いが、クリエイターに伝わった“好例”だと思います。

協賛社賞

大塩水産株式会社

「噛めば、噛むほど」篇野坂 真哉(兵庫県)作品を聞く
≪~ラジオから~≫
男性アナウンサー
ここで、大塩水産の釜揚げシラスの“おしらす”・・・ゴホンッ
“おしらす”です・・・あッ
≪~釜揚げシラスを食べて~≫
ラジオを聴いていた女性
ん~!噛めば、噛むほど 甘くて美味い!
獲れたて即かまゆで!!これなのよ~!!
≪ラジオから≫
男性アナウンサー
大塩水産の釜揚げシラスの“おしらす”、あっ、お知らせでした!
女性 噛むほど、うまいっ!!
【 寸評 】
アナウンサーが言い間違える「噛む」と、食べ物を「噛む」をひっかけて、うまくまとめた作品です。欲を言えば、大塩水産の釜揚げしらすが、素晴らしい商品だけに、もっと「美味しさ」に肉薄できたら・・・。「噛む」という言葉をリンクさせるだけでなく、商品の本質=「美味しさ」にリンクできたら、もっと味わい深いCMになると思います。

お宝市番館 瀬戸大橋店

「雇用」篇松本 俊彦(京都府)作品を聞く
65~70代くらいの男性(以下、男性): あの~、古本の買い取りって・・・
店員: はい!大丈夫ですよ!
男性: それと、この釣り竿は・・・?
店員: はい!お引き取りできますよ!
男性: ついでに、私も・・・
店員: う~ん、それじゃあ面接しましょうか!
NA: リユース品の買い取りはもちろん!一緒に働く仲間も募集中!
エンターテインメントリユースショップ お宝市番館 瀬戸大橋店
【 寸評 】
品揃えの豊富さ、売り場の楽しさ、リユースの魅力などを表現したCMが多い中、この作品が他と違ったのは「雇用」に言及したところ。主婦やシルバー世代まで幅広く雇用し、地域を元気にしている。どのリユースショップにもあてはまることではなく、お宝市番館ならではの特徴に光をあてる。CMの基本となる大切な視点だと思います。

柿茶本舗有限会社

「最近の息子」篇柴田 賢一(茨城県)作品を聞く
少し過保護な母(以下、母): 最近うちの息子が、
オーガニックな柿茶を飲んだり、
柿茶のアイスクリームを食べるようになった・・・
女の影が見えるわね・・・
SE: ズズッ(柿茶を飲む)
母: はあ~、まあいっかー!
NA: 心穏やかになる柿茶。
アンテナショップ「かきのは」でどうぞ。
【 寸評 】
男性の趣味趣向が変わると、「あれ?彼女できた?」と思う、女性の“勘”をフックにした作品。母だけのモノローグにしたことで「息子の彼女」への想像が膨らみ、美しい女性が柿茶を飲んでいるシーンが浮かんできます。食品は女性にウケればヒットする、と言われますが、この作品は「柿茶」と「女性」を、とても上手に結びつけています。

一般社団法人 希少糖普及協会

「きしすせそ」篇清水 裕一朗(静岡県)作品を聞く
料理教室の先生: 皆さん、料理の基本は「さしすせそ」ですよ!
生徒: 先生、うちは「きしすせそ」です。
先生: 砂糖の「さ」じゃなくて、「き」なの?
生徒: 希少糖の「き」です。カロリーオフで脂肪燃焼効果もある、希少糖です!
NA: 香川発の次世代甘味料。希少糖普及協会。
先生: 「きしすせそ」!
【 寸評 】
天然由来、カロリーゼロ、脂肪燃焼効果もある。もはや“砂糖”にとって代わる存在?
そんな希少糖を「さしすせそ」ならぬ「きしすせそ」で表現した、シンプルながら耳を引くCMです。惜しいのは、生徒の希少糖の説明がノーマルなところ。生徒の年齢や性格を設定することで、ただの説明ではなく、「生きたセリフ」になると思います。

弘法大師御誕生1250年祭実行委員会

「推しも押されぬ」篇藤本 周司(神奈川県)作品を聞く
男子1: 俺の推し、地元出身なんだよね
男子2: 来年も残ってるといいな~
3年もてばホンモノ、タレントで10年残ればスターだね!
男子1: 俺の推し、1250年目
NA: 善通寺出身のレジェンド、弘法大師空海
男子2: 神推しじゃん!
男子1: いやいや、仏推し!
【 寸評 】
CMの課題は「弘法大師を身近に感じさせること」。善通寺生まれ。幼名・真魚。多彩な才能、などの事実を並べるだけだと、「へえ~」で終わってしまいます。この作品は“現代の価値感”で弘法大師を捉え直した視点が◎。「本物」「レジェンド」を超える存在。ならば何と呼ぶ?それを言い当てるコピーがあると、更に良くなります。

小豆島手延素麺協同組合

「素麺界のスター」篇山野 大輔(大阪府)作品を聞く
BGM: 演歌のイントロ風
昭和の音楽番組MC: 小豆島のアイドル「島の光」さん。
瀬戸内の風と太陽をあびて、
のびのびと延ばされたなめらかなのど越し
それでは、お聴きください
「瀬戸内 寒風 天日干し」
BGM: カット
SE: (素麺をすする音)ズズズ~ッ
NA: 続々育っています。
素麺界のスター 小豆島手延素麺「島の光」。
【 寸評 】
食品CMの使命は「食べたいと思わせること」ですが、食品の美味しさは、左脳で理解させるより、右脳で感じさせるほうが効果的です。この作品は、「演歌」を使って、瀬戸内海へ、リスナーを一気に誘い込みます。海と空の青。寒風に揺れる白い素麺。そんな鮮やかな風景を想像させることができれば成功です。

医療法人社団 しん治歯科医院

「反抗期」篇岩田 奎(東京都)作品を聞く
娘: いったいお母さんに私のなにが分かるっていうのよぉぁああ?!
母: わかってるわよ。
右下から8番半埋伏(はんまいふく)。
7番6番5番ノーマル。
4番C、3番C、2番1番反対側(はんたいそく)1番2番3番までノーマル・・・
娘: わ、わかったから!
お母さん、しん治歯科で働きなよ~!
母: ええ?
娘: しん治歯科!
【 寸評 】
募集CMは、ターゲットを絞れば絞るほど、「私のことだ!」と刺さるCMになります。この作品は「右下から8番半埋伏」など、歯科衛生士がピンとくる言葉を使いつつ、さらに、反抗期という設定で「ママ世代の歯科衛生士さん」を意識したところも◎。子育てでキャリア中断した多くの歯科衛生士さんが「私のことだ!」と反応してくれるはず。

新鮮市場きむら

「魚の本音」篇和田 裕史(東京都)作品を聞く
NA: これは、魚たちの声です
SE: (船上に水揚げされた魚たち)ピチピチ
魚A: なあ、俺たち どこの店に並ぶんだろ?
魚B: そうだな~、新鮮なうちに並べてほしいよな!
魚C: トロ箱で 店先に ドーン!!
魚A&B&C: 『アガるゥ~!!』
NA: 志度しど魚市うおいちも経営!魚もうれしい“新鮮市場きむら”です!
魚A&B&C: やっぱり きむらがいいよな~!!!
【 寸評 】
きむらの魚が新鮮なのは「魚市場」を経営しているから。それを、そのまま言葉で伝えるCMが多かった中、この作品は「魚の目線」という設定がユニークでした。もし私が魚だったら、やっぱりトロ箱でセンターに並べて欲しい!と思います(笑)。ラジオなら「魚が喋る」設定も自由自在。ラジオの特性を生かした作品です。

Hammer Academy(ハマーアカデミー)

「行先は同じ」篇藤本 周司(神奈川県)作品を聞く
孫: あっ!塾の時間だ。おじいちゃん、塾まで一緒に行く?
祖父: ワシもプログラミング教室の時間か。
父: パパもコワーキングスペース行くよ。
孫: じゃあ、みんなで行こう。
NA: 世代は違っても「行き先」と「学びたい」気持ちは同じ。
Hammer Academy
SE: ガチャ (ドアを開く音)
孫: 先生、こんにちは!! えっつ?ママ???
ママ: ママも起業の相談!!
【 寸評 】
この作品は、「行先が同じ」というポイントを見つけたことで、Hammer Academyの多彩なサービスを串刺しにすることに成功しています。とても完成度の高いクレバーな作品。惜しいのは、登場人物や場所がイメージできないこと。どんな性格?どんな場所?1つでも想像を助けるワードがあると、より生き生きしたCMになると思います。

有限会社 東原商店

「お礼の電話」篇藁科 誠(神奈川県)作品を聞く
SE: (スマホのバイブ)ブーブーブー
男性社員: (小さな声で)
もしもし、今会議中なので、また後で・・・
SE: ブーブーブー
男性社員: もしもし、今、会議中なので・・・
部長: おい!なんで電話ばかりしてるんだ!
男性社員: ヒガシハラのオリーブ牛を贈ったんで、お礼の電話が鳴りやまないんです。
NA: 秒でお礼が言いたくなるオリーブ牛ギフト!
肉のヒガシハラ
【 寸評 】
食品CMは女性を狙うのが王道ですが、この作品は、珍しく男性目線。みごとに、審査員の男性陣がこぞって、「あるある!」と共感しました。「それなりの年齢になると、それなりのギフトを贈らねばならない時がある」という某審査員の発言がリアルでした(笑)。ターゲットを絞れば絞るほど、強く刺さるCMになる、という好例だと思います。

ボートレースまるがめ

「お姫様」篇柴田 賢一(茨城県)作品を聞く
少女ミユ: ミユ、大きくなったらお姫様になる~!
NA: それから10数年後・・・
ミユは、女王になった。
SE: (競艇場を走るボートの音)ブーン!ザパーン!
NA: そこは、男女が対等に戦える世界。
大人ミユ: かかってきなさい!
NA: 平均年収1,700万。
ボートレーサー募集中。ボートレースまるがめ
【 寸評 】
ボートレ-スは、未経験から挑戦できて、男女が平等に戦えるスポーツ。この作品は、お姫様になりたかった小さな女の子が、本当に女王になった、という設定ですが、多様性が尊重される時代にあって、ボートレースの可能性を示唆していると思います。女王になったミユのセリフを、もう一ひねりできると、さらに良くなると思います。

株式会社マリモハウス(旧株式会社ユーリックホーム)

「合唱団」篇清水 裕一朗(静岡県)作品を聞く
男性NA(以下NA): 私たちマリモハウスは、家づくりのニーズにお応えします。
高くしたり・・・
合唱団(男、女、女の3人): (高い声で)マリモ~
NA: 低くしたり・・・
合唱団: (低い声で)マリモ~
NA: 大きくしたり・・・
合唱団: (大きな声で)マリモ~
NA: 小さくしたり・・・
合唱団: (小さな声で)マリモ~
NA: 価格も広さもちょうどいい家づくり、マリモハウス。
女性 NA: ユーリックホームはマリモハウスに生まれ変わりました。
【 寸評 】
お題は「マリモハウスの名前を覚えてもらえるCM」。合唱団が「マリモ~♪」と何度も歌うことで、刷り込み効果を狙っています。「家づくり」と「合唱」を結びつけるのは、ちょっと“こじつけ感”もありますが、「大きくもできるし」「小さくもできる」という、合いの手を入れて、「ちょうどいい家づくり」につなげることで、CMとして成立させています。

丸善工業株式会社

「証拠隠滅」篇嶌田 紀章(埼玉県)作品を聞く
母: (できるだけしゃべり言葉で)
デパ地下のケーキ、美味しかった~!
けど、家族の分まで食べちゃったわ・・・
証拠隠滅に“フクロ”捨てなきゃ!>
けど、この“フクロ”かわいい・・・
ん~、どうしよう・・・
SE: (ドアを開ける音)ガチャ
娘: ただいま!
あ~っ!その“フクロ”!
NA: 魅力的な“袋”を作る オリジナルデザインも 丸善工業
【 寸評 】
日常生活で、「袋」がフューチャーされるのはどんな時?このCMの作者が導き出したのは“お菓子の袋が素敵だった時”。素直に「あるある」と共感できました。袋が見つかってしまった時、母娘の目が、どちらも点になっている様子が想像できます(笑)。「とっておきたいほど素敵な袋」という、丸善工業ならではの“商品力”も伝わります。

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